絵を形づくるもの

日本画の顔料で絵を描きだす時、最初の下地は水干と呼ばれる安価な絵の具でベースを創ることが多い。

もとは泥絵の具とも呼ばれ、胡粉や土に染料を染めつけてあるので、均一に画面をならしてくれる要素もある。

水干絵の具は渇いて粒子の荒い板状になっていることが多いので、最初にすり鉢で丁寧に砕いてから、天然の膠を少しずつ加えて丁寧に指で練っていく。


絵の具を作る作業はどこか瞑想や宗教儀式にも似ている。

膠を絵の具の粒子にきちんと密着させるように念じながら、まとまってきたらお皿にそれを力強く叩きつけ、余分な膠をお湯で湯抜きし…

顔料の知識がない人が見たら(それが一般的ではあるけれど)、黙々と続く一連の作業はなんとも不思議な情景であることには間違いない。

早く描き出したくて、イライラすることもあるけれど、私の中では大切な作業だ。

鮮やかに手を染めながら、ひたすらに白いお皿に向っていると、時たま、これから描きだす絵の断片のようなものが、お皿の向こうにゆらゆらと揺らめいて見えたりする。

それらを逃さないように、ゆっくりゆっくり念じながら、色の粒子の中に心ごと潜っていく。

絵の具が生まれる瞬間だ。

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