Tèchneの意味
「Tèchne」という展示会のタイトルをキュレイターのティツィアーナが言ったとき、新しい言葉の響きに意味がわからず戸惑った。 テクネ…テクニックのラテン語だろうか、でもどうして二人の展示会にテクネ? そうして、ティツィアーナが目を輝かせてTèchneの意味を話し始めた時に、その深い意味にハッとした。 言葉の意味を知る、ということは、新しい世界が一つ目の前に開くことと似ている。 Tèchne(テクネ)とはギリシャ語でテクニックという言葉の起源になった最初の言葉であるけれど、その意味は英語やイタリア語、日本語のそれとも違って、単なる技術ではなく、アートという概念を内包している言葉だと言うのだ。 Tèchneとは、個々の真理によって導かれ、創作される行為そのものを指す。 そこに偶発的なものはなく、小手先の器用さも勿論ない。 確かな経験と知識から、意識的、無意識的に導かれる一つのエネルギー。 それをTèchneという。 それがアートでなくて、なんだろう。 日本画という伝統的な手法からスタートした私の、テンペラ画というイタリアの古典技法から作品を生み出すTomoko Sakaokaの、技術を極めた上で自分だけの世界を切り開いている二人に、ぴったりの言葉ではないかと、まだ若いキュレイターの彼女は興奮気味に話し続けていた。 それを見ながら、この人に作品を預けよう、大丈夫!と心の中で頷いた。 Tèchneという言葉の意味を噛み締めながら。 そう、このお話はこの展示会が形になるか、ならないかの始まりの頃のお話でした。こうやって、Tèchneを実現させることができて、本当に良かった。